
今回は、梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』の感想です。不登校の少女まいちゃんと祖母の心のふれあいなどを通じて、心の成長を描いたハートフルな物語。大人も心にも響く名作です。
梨木香歩とは?
梨木香歩
鹿児島県出身。1959年〜。児童文学作家、絵本作家、小説家。
日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、第44回小学館文学賞受賞作品。
西の魔女が死んだ
書籍情報
書籍名:西の魔女が死んだ
著 者:梨木香歩
発行年:1994年、文庫版は2001年
ジャンル:日本文学・児童文学
\✨️ 愛 蔵 版 ✨️/
書籍名:西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集
著 者:梨木香歩
発行年:2017年
ジャンル:日本文学・児童文学
- 価格: 1870 円
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こちらは『西の魔女が死んだ』と、それに絡んだ短篇小説『ブラッキーの話』『冬の午後』と、書き下ろし『かまどに小枝を』の3篇を併録した愛蔵版小説集です。
読書難易度
児童文学なので簡単。
あらすじ
祖母と不登校になった孫娘の愛情物語。なお、ファンタジー要素は殆どありません。
感想
映画化もされているベストセラーなので、この作品をご存じの方も多いんじゃないでしょうか。
てっきりライマン・フランク・ボームさんの『オズの魔法使い』のようなファンタジー性がある物語だと思い込んでいたんですけど、読んでみたらちょっと違っていた。
ファンタジー要素が殆ど無い。でもガッカリ感も無かった。素朴で素敵な愛情物語で、なかなか良かった。出来過ぎというか理想的過ぎる気がしなくもないけれど、児童文学ですのでそれも良し…、かな。
不登校の主人公・まいちゃんは、しばらく大好きな祖母(日本在住のイギリス人)の家で過ごすことになった。
そして自然に囲まれた長閑な環境で、英国風の素朴な生活スタイルを満喫しながら、ファンタジックではない魔女の手ほどきを受け、色々学んでいくんですね。善き時間の過ごし方ですね。
その祖母から伝授された魔女修行の肝心かなめは、「何でも自分で決めること」だった。
しかしある日、祖母との間に心の溝ができてしまい、仲直りしないまま同居生活が終了してしまう。でも祖母はちゃんと約束を覚えていた。
強く優しくしなやかで、豊かな愛情を持った祖母だった。まいちゃんも可愛いけど、祖母も可愛い人なんだなぁ👍
【POINT1】大人の心にも響く
物語の中で、まいちゃんはメンタル的にシンドい環境から離れ、祖母と穏やかに暮らすわけですが…
あれだね。子供だって、生きてりゃ色んな事があるよね。
例えば、本当は救われたかった、本当は逃げ出したかった、寂しかった、劣等感を感じた、何かを我慢していた、子供ゆえの無力感を痛感した、誰かに手を差し伸べてもらいたかった、とか。
誰もが子供時代に、大なり小なりそんな経験をしているんじゃないだろうか?
大っぴらには言えないけれど、話せる人もいないけど、お金や、薬や、学校の教科書ではどうにもならない苦ってやつ。
だから大人でも心に響く物語なんだろうなぁ。
物語の中で、サボテンや蓮の花やシロクマのたとえ話が出てくるんだけど、それを読んだら、心が救われた気分になる人って多いんじゃないかなと思う。
別にどうってことないたとえ話なんだけど、でもとても良い話なんだわ👍
こんな暖かい物語を読んでしまったので、「現代の悩める子供達に、手を差し伸べてくれる大人がいますように🙏」なんて、ついガラにもないことを願ってしまったわい(笑)。
【POINT2】祖母のメッセージ
祖母の元を去ってから、祖母と会う機会が無かったまいちゃん。しかし亡くなった祖母は、まいちゃんにメッセージを残していた。
短いメッセージだったんですが、その言葉には祖母の想いが集約されていた。
孫が自分の元から離れていく寂しさよりも、孫への愛情や、孫の幸せと成長を願う気持ちがはるかに勝っていた。
最後まで、繊細なまいちゃんの心を受け止めていたからこそ、まいちゃんの感じていた気まずさも後悔も察していて、そのネガティブな想いの全てを、愛情で包みこんで旅立っていったんでしょう。
素敵な絆だ。
【POINT3】東西の魔女
『オズの魔法使い』の東西の魔女は双子のヒールキャラでしたが、『西の魔女が死んだ』の東西の魔女は、愛情豊かな祖母と孫。
西洋人の祖母は東洋人と結婚し、日本に住みながら西洋の魔女として生きることになる。それから時が経ち、西洋の血筋を少し有する東洋人の孫・まいちゃんが生まれた。
祖母は、まいちゃんが魔女のスピリットを受け継ぎ、東洋の魔女として立派に成長していくはずだと確信していた。
日沈む国(英国だけど)の魔女が旅立ち、日の出ずる国の魔女が誕生したわけだ。
故にまいちゃんは西洋と東洋を繋ぐ次世代の魔女であり、愛に満ちた幸せな人生を歩むだろう、と安心して祖母は旅立ったのでしょう。
なお、本書には、その後のまいちゃんの物語「渡りの一日」が併録されている。こちらも良かったよ。
きっとまいちゃんも素敵な東の魔女になるのでしょう。
考察。なぜ魔女なの?
魔女の語源は諸説あるので何とも言えないけども、キリスト教から迫害されるよりもっと以前のリアルな魔女は、自然と共に生きて、薬草で治療したり豊穣祈願するシャーマンのような存在だったんじゃないでしょうか。
祖母が魔女と呼ばれた理由は、物語の中に書いてあった。
でもこの物語の魔女の修行は、透視能力や予知能力を鍛え上げるものではないし、まいちゃんにその特殊能力があるかどうかも全く重要ではなかった。
それよりも瑞々しく豊かな精神性を養うことを本懐にしていた。
魔女として生きてきた祖母は、自身の経験からリアルな魔女の生き方には幸福に暮らせるヒントが有ると考えていた。故にまだまだこれからの孫に、幸福になるための道標になってあげたかったんじゃないでしょうか。
物語では、祖母との暮らし自体が、魔女の修行だったわけだけど、モットーとしていたのが「何でも自分で決めること」。先ずそこが孫に足りないもの、と祖母は判断していたんでしょうね。
だから自己を見つめ、自分の心が本当に望んでいること、どんなことにチャレンジしても良い自由があることを知る機会を与え、それを表現する経験をまいちゃんに積んで欲しかったし、そこから自立を促し、本来の自分らしさを取り戻して欲しかったのだろうと思う。
ジャムを作ったりサンドイッチ作ったり、一つひとつは些細な成功体験だけども、その小さな幸せを積み重ねていく大切さも知って欲しかったんじゃないかな。
また、近所の人達との温度差や価値観の違いを知って、感じ、考えることも、まいちゃんには必要な経験だと思ったのだろう。
それらを魔女の修行と位置づけて、共に暮らす時間の全てが、まいちゃんにとって強くしなやかに生きていけるヒントになりますように、と祖母は願っていたのだろうと思う。
あとがき
今回は、優しさと温かさ、そして切なさが詰まった梨木香歩さんのベストセラー『西の魔女が死んだ』の感想でした。
中高生時代に、この作品に出会えた人は幸せだなぁ。
私は大人だけど、いつか美味しい紅茶を飲みながら、ゆったりとした気分で再読したいと思える物語でした。
大人も感動できる名作物語なので、学生さんだけでなく、お子さんやお孫さんがいらっしゃる方も、生きづらさを感じている大人にも是非読んで欲しい一冊でした。
作品名:西の魔女が死んだ
監 督:長崎俊一
出 演:高橋真悠、サチ・パーカー他
原作者:梨木香歩
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おばあちゃん役はサチ・パーカーさんなんですが、この方はニューエイジ系スピリチュアル界隈の大御所シャーリー・マクレーンさんの娘だそうです。スピリチュアルに関心をお持ちの方なら、興味をそそられるキャスティングかもしれませんね。
では、またね😊
貴方が素敵な本に出逢えますように。
こちらの記事でも児童文学やハートフルな物語を紹介しています。よかったら読んでみてくださいね。